「私を遣わしてください!」 L.i.C

それは1870年のことでした。青年ウィリアム・ブース先生が、夜の集会を終え、
東ロンドンの裏街まできたときのことでした。
薄暗い道路に、酒に酔いつぶれて倒れてしまっている人たちがたくさんいます。
また、暴力団同士のけんかが始まりました。
ブース先生はこぶしを固く握りしめ、涙を流しながら、

「イエス様、なんというすごいありさまでしょう。
まるで地獄です。この人たちはイエス様を知らないのです。
どうぞ、私をこの地のためにお遣わしください」とお祈りしました。

牧師先生たちが大勢集まったときに、ブース先生は立ち上がると、
「みなさん、私を東のロンドンのみだれている、汚れた町に遣わしてください」と言いました。
牧師先生たちは驚いて、互いに顔を見合わせていました。

そして、一人の老牧師が立つと、
「ブース先生、あなたはまだ若いから、そんなことをおっしゃるのです。
あの町は暴力団と、酔っ払いの巣のようなところです。
あなたが行ったところで、だれがイエス様の福音に耳をかたむけるでしょうか」と言いました。
ブース先生は、「しかし、神様の命令です。ぜひ、私を遣わしてください」と一歩も引きません。

水をうったように静かになり、一分、二分と時間が過ぎ去りました。
ところが二階の傍聴席で、一人の婦人がすっくと立ち上がりました。
「おやりなさい。だれが反対しようが、神様に背くことはできません。私はついて行きます」。
あっけにとられた人たちが、その婦人を見ますと、
ウィリアム・ブース先生の奥様ではありませんか。

やがて二人は、粗末な服を着て、東ロンドンの街角で、
聖書を手にしながら、熱心にイエス様の救いについて語り始めました。
やがて救われる人が起こり、この働きに「救世軍」という名前がつけられ、
世界中で伝道されるようになりました。

「良い知らせを伝える者の足は山々の上にあって、なんと美しいことよ。
平和を告げ知らせ、幸いな良い知らせを伝え、救いを告げ知らせ、
「あなたの神が王となる」とシオンに言う者の足は」(聖書/イザヤ52:7)

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