ロンドンの町にトムという男の子がいました。
トムは生まれつき足に障害を持ち、歩いたことが一度もありませんでした。
両親とは死に別れ、おばあさんの家に預けられていたのです。
彼の部屋は屋根裏の小部屋で、孤独に打ちひしがれそうになっていました。
そんなある日、彼の友人が訪ねて来て、仕事が成功したから何かをプレゼントしたいと言うので、「それなら聖書が欲しい」と頼みました。
聖書を手にしたトムは、読めば読むほど神の愛がわかり、じっとしていられなくなりました。「聖書には『みことばを宣べ伝えなさい』と書かれてある。
僕にも何かできないだろうか……」
そのとき良い考えがひらめきました。
彼のベッドはちょうど窓際です。
彼は毎日みことばを紙に書き、それを窓から落とすことにしたのです。
そんなある日のこと、ひとりの紳士がトムを訪ねて来ました。
「私はなまぬるいクリスチャンだった。
君が書いたみことばを読んだとき、このままではいけないと悟った。私はこれから田舎に帰り、心を入れ替えて神様のために働こうと思う。」
それからも、そのトムのみことばの手紙をとおして救われる魂が起こされました。
やがてトムの病状は悪化し、天に召されました。
しかし、トムの窓から落としたみことばは、今も神の愛を人々に語り継いでいるのです。
いつも、何の役に立つかわからないような小さなことから奇跡は起きてるんです。
「弟子のひとりシモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った。『ここに少年が大麦のパンを五つと小さい魚を二匹持っています。しかし、こんなに大ぜいの人々では、それが何になりましょう。』」 (聖書/ヨハネ6:8~9)