1950年代の中国での出来事です。
共産主義革命の後、中国全土にキリスト教に対する迫害の嵐が吹き荒れ、
多くの牧師や伝道者たちが逮捕されて労働改造所に送られました。
当時は食事事情も悪く、囚人たちの間では食べ物を
めぐるけんかや殺し合いが絶えませんでした。
A師はその頃、信仰のゆえに
アンホイ省の労働改造所に入っていました。
台湾出身のA師には、他の囚人のように
差し入れをしくれる家族や親戚もありませんでした。
夕方の自由時間に、向こうから一人の兄弟が
「いい知らせ! いい知らせ! 」と叫びながら走ってきました。
彼はカバンから粉ミルクを出しながら「これは今母から送られてきたものです。
あなたに食べてもらおうと持ってきました」と言いながら、
スプーンですくってA師の目の前に差し出したのです。
このようなものは何年も口にしたことはありません。
のどから手が出るほど食べたいと思いました。
しかし、くれるといっている兄弟は自分より年上で病弱な体です。
それに彼のお母さんは苦労してこの粉ミルクを手に入れたことでしょう。
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